干し芋の栄養
秋が深まるころ、スーパーの一角に並びはじめる干し芋を見ると、季節がひとつ進んだことを感じます。
袋を開けたときの素朴な甘い香り、噛むほどに広がるやさしい甘み。
派手さのないおやつですが、その一枚の中に、体にうれしい栄養がぎゅっと詰まっています。
干し芋の小さな力
干し芋は、さつまいもを蒸して乾燥させたもの。
水分が抜けているぶん、栄養も甘みも凝縮されています。
100gあたりのカロリーは約277kcal。
糖質は多めですが、その一方で食物繊維やカリウム、鉄分、ビタミンE、ビタミンCなどが豊富に含まれています。
特にカリウムは体の余分な塩分を調整してくれる働きがあり、むくみの予防にもつながるといわれています。
心を整えるおやつ
干し芋のやさしい甘さは、白砂糖を使ったお菓子とは少し違う満足感があります。
天然の糖質でありながら、血糖値の上昇がゆるやかな“低GI食品”とされており、食後も穏やかな気分でいられるのが魅力です。
仕事の合間や読書の前にひとかけら口に入れると、エネルギーがふっと戻ってくるような安心感があります。
腸が喜ぶ自然の食べもの
干し芋に多く含まれる食物繊維は、腸内環境を整えるのに役立ちます。
便通を促したり、善玉菌の働きを助けたりと、体の内側からリズムを整えてくれる存在。
わたしは、甘いものがどうしても欲しくなったとき、干し芋をひとつまみだけおやつに取り入れることがあります。
お腹にやさしく、少しずつ噛みしめる時間が、心まで落ち着かせてくれるような気がします。
ほどよく、がちょうどいい
栄養価の高い干し芋ですが、乾燥しているぶんカロリーも糖質も濃縮されています。
つい手が止まらなくなるほどおいしいけれど、食べすぎには注意が必要です。
40gほど──だいたい一枚分を目安にすれば、エネルギー補給としても満足感のある量になります。
甘いものを我慢するより、体にやさしい選択を上手に取り入れること。
それが長く続けられる“食のリズム”なのだと思います。
おわりに
干し芋は、特別な調味料も添加物もいらない、自然なおやつ。
その素朴さの中に、昔ながらの知恵と、いまのわたしたちに必要な栄養が共存しています。
ゆっくり噛んで味わう時間は、忙しさの中で立ち止まる小さな休息。
秋の午後、湯気の立つお茶と干し芋があれば、それだけで心がほぐれていく気がします。