乳児てんかん性スパズム症候群――小さな体の中で起こる、見えない嵐
赤ちゃんがふと、体をぐっと丸める。
一瞬の動きにしか見えないけれど、それが何度も繰り返されるとき、それは「乳児てんかん性スパズム症候群(IESS)」という病気のサインであることがあります。
かつて「ウエスト症候群」と呼ばれていたこの症候群は、生後3〜12か月頃に発症しやすく、短い発作を群発するのが特徴とされています。
脳の中で電気信号が乱れ、体が前屈したり、四肢が突っ張るような動きを見せることもあるそうです。
見逃されやすい“サイン”
発作は数秒と短く、眠りから覚めた直後などに起こることが多いといわれます。
動画で見ると、驚くほど一瞬。
親であっても、ただの「びくっ」とした反射だと思ってしまうかもしれません。
けれど、その背後では脳の電気活動が乱れ、「ヒプスアリスミア」と呼ばれる特有の脳波が現れています。
この症状が現れると、発達の停滞や退行を伴うことが多く、笑わなくなる、寝返りをしなくなるなど、小さな変化が少しずつ積み重なっていきます。
原因と背景にあるもの
原因はひとつではありません。
遺伝子の変化、脳の形成異常、出生時の低酸素、感染――
さまざまな要因が重なり合って発症します。
ときには、原因が見つからない「特発性」とされる場合もあります。
発症の背景が明らかであるほど、治療や経過の見通しが難しくなることが多いとされています。
それでも、どんな原因であれ、できるだけ早く“異変に気づくこと”が、その後の発達を守るための第一歩になるのだと思います。
治療と向き合う日々
治療は、ホルモン療法(ACTH)や抗てんかん薬(ビガバトリンなど)が中心です。
早期に発作を抑えることができれば、発達の遅れを最小限にできる可能性があります。
ただし、治療の反応には個人差があり、てんかんが続いたり、別の症候群へと移行するケースもあります。
家族にとっては、薬の副作用や再発への不安など、長期的な支えが必要となる場面も多いでしょう。
リハビリ、医療、教育、福祉が一つの輪となって、子どもと家族を包み込むことが大切です。
“静けさ”の中にある強さ
「乳児てんかん性スパズム症候群」にある「スパズム」という言葉には、“突然のけいれん”という意味があります。

けれど、実際に向き合う家族にとっては、突然よりも“続いていく時間”の方が長く、重い。
それでも、少しずつ、確かに歩みは続いていきます。
乳児てんかん性スパズム症候群は、治療と観察を同時に続けていく疾患です。
完治の道が一つではなくても、その子の“今”を支える方法が必ずどこかにある。
そう信じて、医療の手と社会の目が届く場所で、小さな命の時間が育まれていくことを願っています。











