『成瀬は都を駆け抜ける』物語の最後に流れる風
本には、ページを開いた瞬間にだけ流れる“その物語だけの空気”があります。
宮島未奈さんのシリーズ最終巻『成瀬は都を駆け抜ける』も、そんな特別な空気をまとった一冊。
滋賀から京都へ。
高校から大学へ。
成瀬あかりという人物が歩いてきた道の続きをそっと見守るように綴られた物語です。
京都という舞台の、静かな輪郭舞台は大学生になった成瀬が暮らす京都。
観光地としての華やかさではなく、生活の気配がゆるやかに漂う“学生の京都”が描かれているようです。
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さいたまスーパーアリーナからの脱出|巨大な空間に散りばめられた物語
大きな建物の中に入ると、まだ何も始まっていないのに、空気がひそやかに揺れる瞬間があります。
人の気配よりも前に漂う“期待の匂い”。
さいたまスーパーアリーナで行われる「さいたまスーパーアリーナからの脱出」は、そんな気配そのものを楽しむイベントのように思えました。
シリーズとしては“最後”の開催だと知り、時間がひとつの幕を閉じる前の静かな高まりが、会場全体に満ちていく様子を想像してしまいます。
広大な空間を歩きながら物語に触れるこのイベントは、約100分の制限時間の中でアリーナを歩き回り、散 ...
古内一絵『女王さまの休日―マカン・マラン ボヤージュ』に感じる、旅の余韻
本を開く前に、タイトルの「女王さまの休日」という言葉に少し心が和みました。
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女王さまの休日 マカン・マラン ボヤージュ (単行本)
どこか自分の中にもある「休み方を忘れてしまった誰か」を思い出させるようで。
古内一絵さんの新作は、人気シリーズ「マカン・マラン」の続編として、開店十周年を迎えた物語のその先を描くのだそうです。
“マカン・マラン”という静かな場所シリーズを通して、夜ごとに人が集い、食を通して心を癒やす小さな店「マカン・マラン」。
そこに流れていたのは、日常の延長線上にある小 ...
『本でした』たった一行から、無限の物語を紡ぐ時間
書店の入口で偶然見かけたのが、『本でした』というタイトルが書かれた柔らかな装丁でした。
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本でした (一般書 500)
又吉直樹さんとヨシタケシンスケさんによる共著で、前作『その本は』から約3年ぶりの再会になるとのこと。
まるで旅先で思わぬ景色に出会ったような、不思議な予感が胸に残りました。
物語は、村はずれの空き家に住む二人の男が、小さな手がかりで本を“復元”する、というものだそうです。
「その本は、○○○が○○○でした。これってどんな本でした?」というたった1行のヒントから、二人が短 ...
映画『星つなぎのエリオ』夜空にひそむ、ひとりぼっちの願い
先日、映画館の前を通りかかったとき、淡い星空と少年の姿が描かれたポスターに足が止まりました。
タイトルは『星つなぎのエリオ』。
その響きに、しばらく見入ってしまいました。
物語の中心は、11歳の少年エリオ。
両親を亡くし、居場所を探すように毎日を過ごす彼が、ある日ふと宇宙に向けて思いを放ったことから始まるそうです。
その声は異星の世界「コミュニバース」に届き、エリオは“地球代表”と誤解されながら、そこで孤独なエイリアン・グロードンと出会います。
互いに理解されずにきた二人が、言葉や種族を超え ...