映画『遠い山なみの光』が映す、記憶と静けさ

カズオ・イシグロの小説を原作にした映画『遠い山なみの光』が公開されたと知りました。
監督は石川慶さん、出演は広瀬すずさん、二階堂ふみさん、吉田羊さんなど。
日本・イギリス・ポーランドの合作映画で、すでにカンヌ国際映画祭にも出品され注目を集めているそうです。
二つの時間を行き来する物語舞台は1980年代のイギリスと、戦後の長崎。
イギリスで暮らす娘ニキが、母・悦子の過去に触れていくことから物語は進みます。
悦子の口から語られる長崎での出来事には、どこか曖昧で嘘めいた部分があり、そ ...
映画『星つなぎのエリオ』夜空にひそむ、ひとりぼっちの願い

先日、映画館の前を通りかかったとき、淡い星空と少年の姿が描かれたポスターに足が止まりました。
タイトルは『星つなぎのエリオ』。
その響きに、しばらく見入ってしまいました。
物語の中心は、11歳の少年エリオ。
両親を亡くし、居場所を探すように毎日を過ごす彼が、ある日ふと宇宙に向けて思いを放ったことから始まるそうです。
その声は異星の世界「コミュニバース」に届き、エリオは“地球代表”と誤解されながら、そこで孤独なエイリアン・グロードンと出会います。
互いに理解されずにきた二人が、言葉や種族を超え ...
映画『国宝』と、言葉にならないものについて

「国宝」という言葉には、どこか近寄りがたい荘厳さがあります。
文化財や建築物だけでなく、人そのものに対して使われることもあるこの語をタイトルに掲げた映画が公開されました。
吉田修一さんの小説を原作とし、李相日監督が手がけた『国宝』です。
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国宝 上 青春篇 (朝日文庫)
主演は吉沢亮さん。
上方歌舞伎の家に引き取られ、芸の世界で生きる青年の物語だそうです。
舞台となるのは歌舞伎の世界。
血筋と才能、宿命のようなものに翻弄されながらも舞台に立ち続ける人々を描いた本作 ...
8番出口 小説

地下通路の出口を何度も探すだけのゲーム。
それなのに、プレイ動画を見ているだけで息が詰まりそうになるあの空気感に、なぜか惹かれてしまいます。
そんなゲーム『8番出口』が小説になったと知って、正直なところ、とても驚きました。
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8番出口
タイトルはそのまま『8番出口』。
著者は川村元気さん。
映画『百花』や『世界から猫が消えたなら』などの脚本で知られている方なので、あの不気味で無機質な空間をどんなふうに文章で描くのか、想像するだけでちょっと鳥肌が立ちます。
「異変」の正体を言葉で追うゲームで ...
真知子巻き

先日、表参道を歩いていたとき、風に揺れる涼しげなスカーフを首元に巻いた女性を見かけました。
その人のスタイルは、どこか懐かしくて新しいような、不思議な魅力があって。
特に目を引いたのは、スカーフの巻き方でした。
よく見ると、それは「真知子巻き」と呼ばれるスタイル。
スカーフを頭からかぶり、あごの下で軽く結ぶ巻き方です。
ふわりと髪が隠れて、顔まわりにやさしい陰影が生まれていて、クラシックで凛とした雰囲気。
わたしの母もどこかでそんな巻き方をしていたような…そんな記憶がよみがえってきました。