ミルクレープ|重なり合う時間のように
カフェのショーケースの奥、透明なガラス越しにふと目が合ったのが、ミルクレープでした。
薄く焼かれたクレープ生地が、丁寧に何層にも重ねられ、そのあいだにふんわりとクリームがはさまっている。
それは、まるで繊細な時間の層を重ねたようなお菓子に見えました。

ミルクレープの発祥について調べてみると、日本では1980年代、東京・六本木のフランス料理店「ルエル・ドゥ・ドゥリエール」が最初という説があるそうです。
その後、ハーブスやドトールなど、人気のカフェでも取り扱われるようになり、幅広い年代に親しまれるケーキとなっていきました。
とくにハーブスのミルクレープは、そのボリュームと美しい断面で知られていて、何層もの生地の間に季節のフルーツが挟まれているものもあります。
いちご、キウイ、バナナなど、フルーツの彩りがクリームと溶け合い、見た目にもやさしい印象です。
一方で、ドトールのミルクレープは、少し落ち着いたサイズ感で、クリームと生地のなじみがよく、食後でもさらりといただける軽やかさが魅力。
小さなカフェでも、こうした控えめな美味しさに出会えると、少しうれしくなります。
家でつくるなら、作り方は意外とシンプル。
クレープ生地を焼いて、ホイップクリームやカスタードをはさみ、好みでフルーツを加えるだけ。
ただ、10枚、20枚と重ねる作業は、けっこう根気のいる工程です。
けれどもその時間はどこか穏やかで、まるで日常に薄紙を一枚ずつ重ねていくような感覚があります。
「レシピ」とは、手順以上に、その人の気配を残すものなのかもしれません。
ほんの少しのバニラエッセンス、少しだけ塩気を感じるバター……。
重ね方や冷やし方で、味わいが少しずつ変わっていくのも、ミルクレープの魅力のひとつです。
ミルクレープを前にすると、不思議と人は静かになるような気がします。
その層の奥にあるのは、誰かの記憶か、丁寧に重ねられた時間か。
わたしも、久しぶりに一枚ずつ、あの静けさを焼いてみたくなりました。











